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2026.09.29

夢中になれる、仕事のはなし|Vol.8 〈nøa coffee and sandwich〉オーナー 大森 紋さん

How long have we been living in this town? We’ve found more favorite spots, and more friends we see all the time. But sometimes, having too many “usuals” can make our world feel smaller. Let’s try a place we’ve never been. Let’s talk to someone we’ve never met. Not somewhere far away just one step beyond the streets we know. About 150 years ago, people came here and started a treasure hunt. Let’s begin the next chapter together.

今回会いに行ったのは、札幌の市電通り沿いで
〈nøa coffee and sandwich〉を営む大森さん。札幌市南区出身の29歳。

銀行員として働いたあと、オーストラリア、ニュージーランドへ。
海外のカフェで経験を積み、帰国してわずか4か月ほどで自分のお店をオープンした。

そんな経歴だけを聞くと、ずっとカフェを開くことを夢見て、
着々と準備を重ねてきた人のようにも思える。
でも、話を聞いてみると少し違った。

スキー漬けの日々、銀行員、海外生活、カフェ、そして独立。
その時々で「自分はどうしたい?」を考えて、決めたらすぐに動いてみる。

大森さんの働き方をたどっていくと、
仕事だけではなく、自分の人生そのものを楽しむためのヒントが見えてきた。

スキーに夢中だった、あの頃

大森さんがスキーを始めたのは3歳の頃。
高校、大学でも競技を続け、学生時代のほとんどをスキーに費やしてきた。

個人競技だったこともあり、練習のスケジュールを組むのも、目標を決めるのも基本的には自分自身。
「いつまでに何をするのか」を考えて、自分で動く。
今思えば、そんな学生時代の経験も現在の働き方につながっているのかもしれない。

大学卒業後、大森さんが就職したのは北海道の銀行だった。
小樽の支店へ配属され、銀行員として社会人生活をスタートした。

仕事そのものは楽しく、日々さまざまな経験を重ねていったという。
一方で、働きながらこれからの自分について考えるなかで、以前から興味を持っていたビジネスや、英語をもっと学びたいという気持ちも次第に大きくなっていった。

銀行で3年間働いたのち、新しい環境で学ぶことを決意し退職。
そして、次なる挑戦の場として選んだのは、日本ではなく海外だった。

海外で見つけた、自分らしい働き方

最初に向かったのはオーストラリア。
ワーキングホリデーを利用して渡航し、現地のカフェで働き始めた。

最初の仕事は、バリスタではなくキッチンハンド。
そこから少しずつ仕事を覚え、コーヒーを淹れるようになっていった。

大森さんが飲食の仕事に惹かれた理由を聞くと、
返ってきたのは料理やコーヒーの話だけではなかった。

きっかけのひとつになったのが、現地で出会ったカフェオーナーの存在だ。
店に立てば、訪れたお客さんと自然に言葉を交わす。
オーナーを中心に会話が生まれ、そこにまた誰かが加わっていく。

コーヒーを飲みに来るだけではなく、オーナーに会いに来るような人もいて、いつの間にか店には人が集まっていた。
カウンターの内と外を隔てるような堅苦しさはなく、店を営む人と、そこを訪れる人との距離が近い。

そんな光景を日々そばで見ているうちに、大森さんのなかで「自分もいつか、こんなふうに人が集まる場所をつくれたら」という思いが芽生えていった。

その後、コロナ禍を経てニュージーランドへ。
ワーキングホリデーから就労ビザへ切り替え、カフェのマネージャーとして働いた。

そして、その頃には次の目標も決まっていた。
「お金が貯まったら札幌に帰って、自分の店をやろう。」

2025年4月に帰国してから1か月半ほどはサーフィンをしたり、コーヒーを飲みに行ったり。
しばらく日本での生活を楽しんでから、ようやく物件探しを始めた。

探し始めて半月ほどで、現在の場所に出会った。
街中も検討したけれど、家賃が高い。
そこで少し中心部から離れた場所へ目を向けた。

南区出身で土地勘があったこと。そして、すぐ横に公園があったことも決め手になった。
契約する前には、物件の前に立って、どんな人が通るのかを2週間ほど観察。

帰国からわずか約4か月後。28歳で〈nøa coffee and sandwich〉をオープン。
開業資金面では、銀行員時代の経験も役に立った。

スキー、銀行、海外生活。
一見するとバラバラに見えるこれまでの経験が、少しずつひとつの店につながっていった。

コーヒーが飲める=カフェではない

〈nøa coffee and sandwich〉で提供するメニューのベースには、ニュージーランドでの経験がある。
現地で覚えたフォカッチャのレシピを持ち帰り、日本で暮らす人たちに合わせて少しずつ変えていった。

現在、ニュージーランド時代とまったく同じメニューは、たったひとつだけ。
パンに使っている小麦粉にも、大森さんらしいつながりがある。

使っているのは、スキーを通じて知り合った友人が士別市多寄町でつくる「春よ恋」。
香りがよく、自分のつくるパンにも合っている。

でも、大森さんの話を聞いていると、この店で一番大切にしているものは、コーヒーでもサンドイッチでもないのかもしれないと思った。

「カフェって、とんでもなく美味しいものを食べに行く場所というより、フランクに話せる場所だと思うんです」

食事やコーヒーは、その時間をつくるためのひとつ。
だから接客もかしこまりすぎない。

前回来てくれたときに何を話したかを覚えておいて、次に来たとき、その続きを話す。
そんな小さなやり取りを積み重ねてきた。

店と客というより、もう少し近い。
そんな関係性が、この場所の日常をつくっている。

店のためではなく、暮らしの中に店がある

現在はスタッフも増え、5人で店を運営している。営業時間も15時まで。
そして大森さんは、これからさらに短くしたいと笑う。

「できるだけ短い時間で、ちゃんと稼げるようにしたいです」

働いてくれるスタッフにも、短い時間できちんと給料を払える店にしたい。
夜まで営業して売上を伸ばすという選択肢もあるし、
店舗をどんどん増やすことだってできるかもしれない。

でも、大森さんが目指しているのは、ただ大きな店をつくることではない。
朝から午後までしっかり働いて、残った時間は自分の生活がある。

サーフィンをしたり、友人と過ごしたり。
店のために生活するのではなく、自分が送りたい生活の中に店がある。

大森さんにとって店を営むことは、仕事だけを充実させるためではなく、
自分が望む毎日をつくるためのひとつの方法なのかもしれない。

札幌で、自分が行きたい場所をつくる

海外から帰るとき、東京で店を出すことはほとんど考えなかった。
帰るなら札幌。その気持ちは最初から決まっていたという。


雪がちゃんと降って、四季がはっきりしている。
冬になればスキーができる。
少し車を走らせればサーフィンだってできる。
それでいて、ちゃんと大きな街でもある。

「こういう街って、世界を見ても意外とないと思うんです」

海外で暮らしたからこそ、札幌にあるものにも改めて気づいたのかもしれない。


これから先、〈nøa coffee and sandwich〉とは違うスタイルの店をつくることにも興味があるという。
自分自身が「行きたい」と思える、そんな場所を自分で増やしていけばいい。

会社員を辞めるときも、海外へ行くときも、
札幌へ戻って店を開くときも、不安がなかったわけではない。

それでも大森さんは、考え続けて動けなくなるより、まずやってみることを選んできた。

「やってしまえば、次に何をすればいいかわかる。
だったら、やった方が早いと思うんです。」

何も考えずに飛び込んでいるわけではない。
大森さんの「まずやってみる」は、勢い任せではない。
自分で考え、自分で決めて、その先もまた自分でつくっていくこと。

好きな仕事をして、好きな街に暮らして、スキーもサーフィンもする。

大森さんの話を聞いていると、「働く」と「暮らす」は、
本当はもっと自由に組み合わせてもいいのかもしれないと思えてくる。

このマチで、自分らしく働いていく。
そんな未来を少しでも思い描ける人が、1人でも増えたらボクらはうれしい。

Profile

大森 紋さん

〈nøa coffee and sandwich〉オーナー

〈nøa coffee and sandwich〉
住所 / 札幌市中央区南10条西6丁目6−20
営業時間 / 月曜 9:00-13:00、 火曜日〜金曜日 9:00-16:00 土曜日〜日曜日 9:00-15:00

Text & Photo by Ai Tsushima
Design by Hikari Yagihashi

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