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2026.06.25
夢中になれる、仕事のはなし|Vol.7 メイクアップアーティスト AMIさん
How long have we been living in this town? We’ve found more favorite spots, and more friends we see all the time. But sometimes, having too many “usuals” can make our world feel smaller. Let’s try a place we’ve never been. Let’s talk to someone we’ve never met. Not somewhere far away just one step beyond the streets we know. About 150 years ago, people came here and started a treasure hunt. Let’s begin the next chapter together.
INDEX
メイクアップアーティストという
人を笑顔にする仕事
札幌市内にある美容室「SEAM」。
サロン専売のヘアケア用品が並ぶショップを併設したその場所に、
メイクアップアーティストのAMIさん(@ami1131)はいる。
フリーランスとして活動し、
SNSで日々発信を続ける27歳だ。
AMIさんのお客さんには、口コミを見て初めて来店するひとも多いという。
20代の若者もいれば60代の方など客層も幅広い。
「メイクって、美容室と違って再来店してもらうことが難しいんです。
だから信用されることがまずはとても大事だと思っていて。
友達のようなフランクさも持ちつつ、
大事な日にも任せたくなる人になりたいです」
彼女とちゃんと会話をするのはこの日が初めてだったのだけど、
終始取材は笑顔の絶えない楽しい時間が流れた。
AMIさんはメイクアップアーティストである前に
一人の人間として非常に魅力のある人だ。
話を聞いていくうちに、その理由が少しずつ見えてきた。
メイクとはほど遠かった
学生時代
「メイクアップアーティスト」という肩書きを聞くと、
幼い頃からコスメが好きだった人なのだろうと、
つい想像してしまう。
けれどAMIさんの学生時代は、
そんなイメージとはまったく違っていた。
小学校から高校までは、バスケ漬けの日々。
キャプテンを務め、練習に打ち込む毎日だった。
4歳上の姉がメイクをしている姿を横目で見ながらも、
当時の自分にはどこか無縁の世界だと思っていたそう。
初めてちゃんとメイクをしたのも、
部活を引退した高校最後の頃だった。
高校2年生。
進路に悩み始めた時期、
姉や友人たちが保育士を目指していたこともあり、
「自分も保育士かな」とぼんやり考えていた。
そんな時、祖母に進路相談をしたところ
「美容部員とかいいんじゃない?」と言葉をもらった。
その瞬間まで、美容部員という仕事すら知らなかった。
けれど、その言葉をきっかけに職業について調べ始めた。
「若作りをするというより、
年齢に合わせた美しさを更新していける仕事って素敵だなと思ったんです。
自分自身も高められるし、お客さんにも喜んでもらえる。
それがすごくいいなって。」
迷いながらも流れに身をまかせずに、人に相談をして
自分が納得する答えを導き出す彼女の中に、芯の強さを感じる。
揺れながら選んだのは
やっぱり「札幌」というマチ
美容部員という夢を掲げ、
札幌の二年制の専門学校でメイクを学び始めたAMIさん。
就職活動の時期を迎えた頃、
進路に迷いながら職員室を訪れると、
たまたま学校に「NARS」の求人が届いた。
運命を感じ、迷わず応募。
札幌の採用枠はたった1名で
東京からのUターン組も集まる狭き門だった。
選考では、書類審査や東京本社での面接に加え、
初対面の相手にNARSの全商品を使ってメイクを施す実技試験も。
「実技試験があると分かっていたので、
事前にNARSのカウンターへ通って、
メイクのコツを教わりながら練習していました。」
自信がない性格だと分かっているからこそ、
人一倍準備を重ねたそう。
狭き門を突破し、NARSから内定を獲得。
だがその数週間後、専門学校の廊下で
エイベックスのマネージャーからスカウトを受ける出来事もあったそう。
モデルへの憧れも、正直あった。
初めて「東京へ行く」という選択肢に心が揺れた瞬間だった。
それでも最後に選んだのは、
「人にメイクを施す」という高揚感と、
札幌で生きていく道だった。
なぜ彼女は、そこまで札幌にこだわるのだろう。
「学生の頃の私は東京へ行くほどの覚悟もありませんでした。
何より、生まれ育ったこの場所が純粋に好きだったんです。
自然も好きだし、温泉やサウナも好きなので、
大人になった今の方が、よりこのマチを好きになっています。」
ブランドの後ろではなく
自分を表現する場所へ
「メイクの基礎はすべてNARSに教わりました。」
そう語るAMIさんは、約3年間カウンターに立ち、美容部員として働いた。
学生時代にバスケで培った負けず嫌いな性格は、
仕事でも変わらない。
売り上げは常に1位を目指し、
指名してくれるお客さんが増えるたびに、やりがいも大きくなっていった。
その一方で、3年目を迎えた頃から
「もっと自分らしさを表現したい」
という気持ちも芽生え始めていた。
ブランドに所属する以上、
髪型やメイク、ファッションもブランドの世界観に沿う。
その魅力を理解しながらも、
“自分自身の個性を出しながらメイクがしたい”
という思いが、少しずつ強くなっていった。
そんな時、縁があって現在も在籍するセレクトショップ「SEAM」へ転職。
来店したお客さんへの接客や在庫管理などを行う
「レセプション」という仕事に就いた。
「SEAMに入社する時から社長には、
“札幌でメイクを盛り上げていきたい”と話していました。
でも当時、この街ではメイクアップアーティストという仕事自体がまだ主流ではなくて。
まずは実績を作る必要があると思ったんです。
だから、自分自身に “前年比から100万円売り上げを伸ばす”という目標を課しました。」
結果を出し続けたタイミングで、
社長に「このショップでメイクをやりたい」とプレゼン。
その言葉を受け、店内にはメイクブースが作られた。
自分の夢に向かって今の自分に何ができるのか、
どうすれば周りを巻き込めるのかを考えて努力をする。
この一連の動きを実行に移すことができるのもAMIさんの魅力の1つだ。
ただ、最初から順調だったわけではない。
なかなか予約が入らず、
技術があっても、発信力がなければ届かないことを痛感した。
そこからInstagramでの発信にも本気で向き合い始めた。
現在はフリーランスのメイクアップアーティストとして活動しながら、
SNSで自分自身の表現も発信。
予約が入ると、SEAMでお客さんにメイクを施している。
自分を発信し続けることで
世界を広げる
地道なSNS発信が実を結び、
今では東京のテレビ局やタレント事務所など道外での仕事も増えた。
東京や地方から
わざわざ札幌まで会いに来てくれるお客さんもここ数年で増えてきたそう。
それでも彼女は東京ではなく、このマチを選び続けている。
「北海道の人って、美意識を高めたい気持ちはあるんです。
でも、やり方がわからない人が多い。
そんな人のあと一歩を後押しできるのが自分だったらいいなと思っています。
誰かの役に立つことができている、喜んでもらえるのが本当に嬉しいんです。」
取材の中で、小学校の頃から塗り絵が好きだったという話を教えてくれた。
色を選んで、重ねて、仕上げていく。
肌というキャンバスに色を乗せていく今の仕事は、
あの頃からずっと続く「好き」の延長線上にあるものなのかもしれない。
東京か、札幌か。
そんな二択の間で、AMIさんもかつて迷っていた。
けれど今の彼女を見ていると、
その問い自体が少し違っていたようにも感じる。
「ここにいる」と、自分自身を発信し続けることで、
東京をはじめ道外からも、人が会いに来るようになった。
世界は、どちらかを選ぶだけではなく、
自分のいる場所から、少しずつ広げていけるものなのかもしれない。
このマチで夢中になって積み上げてきたものが、
いつの間にか場所を越え、人と人をつなぐ道になっていた。
「自分は運がいいんです。」
そう笑うAMIさん。
けれど話を聞いていると、
人にされて嫌なことはしないこと。
謙虚でいること。
感謝を忘れないこと。
そんな彼女が大切にしてきた姿勢が、
少しずつチャンスを引き寄せてきたようにも思えた。
目の前に選択肢が現れるたび、
流されるのではなく、
「自分はどうありたいか」を問いながら道を選んでいく。
札幌というマチで歩み続けるAMIさんの旅路は、
まだ始まったばかりだ。
Profile
Photo by Miku Katsuno
Text by Hikari Kubota
Design by Keisuke Mimura
KEYWORDS
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ABOUT US
LANDについて
いつものマチの、
一歩先。
この街にどれほど暮らしているだろう。
お気に入りのお店も増えて
よく会う仲間も増えてきた。
だけど、「いつもの」が増えるって
自分を狭める。
知らない店に行こう、
話したことのない人に会いに行こう。
はるか遠くの場所ではなくて、
いつものマチの一歩先。
およそ150年前に
この地を拓いた人々から始まった宝探し。
その続きを一緒に始めよう。
CREATORS
撮影・制作 協力クリエイター
-
赤坂若菜
wa___ka.pp
LAND編集長
PATTERN PLANNING(株)CEO|ブランディングディレクター|旅、ラーメン、焼肉、お酒、器ラバー。 -
倉内法生
noriok
LAND編集部
株式会社NEW CEO|クリエイティブディレクター|色々な土地を歩き、体を動かし、モノに触れながら、ユーモアを考える。 -
窪田ひかり
LAND編集部
ディレクター兼コピーライター|LANDの企画・制作・原稿制作を担当。取材を通してこのマチの人と出会うことが大好き。 -
勝野美玖
rmpw110
LAND編集部
ディレクター|食べることと愛犬が原動力。LANDでは撮影も担当。 -
荒巻美千子
hina_ta_bo_kko
LAND編集部
ディレクター兼コピーライター|LANDでは写真撮影も担当。愛機は「Sigma fp」 -
藤崎由理
yurif333
LAND編集部
ディレクター|瓶詰めされた醬と、道内各地の銘菓食べ歩きが大好きです。 -
堀口暁音
akane.ysd
LAND編集部
ディレクター|LANDの企画・運営を担当。編集、音楽、サッポロクラシック。 -
對馬杏衣
ai_tsushima
LAND編集部
ディレクター|LANDの企画・運営を担当。おいしいものと絶景を求め、世界40カ国以上を旅するトラベラー。 -
三村啓介
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アートディレクター|札幌生まれ、B型。アートディレクションとデザインを担当。音楽好き。 -
石塚 雄一郎
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LAND編集部
グラフィックデザイナー|イラストが得意。お酒とカレーと狸小路が大好き。好きな色は緑。 -
佐藤翔吾
ss.shogo
LAND編集部
グラフィックデザイナー|ランニングしながら街や気になる場所を観察するのが日課です。 -
八木橋ひかり
hikari____8
LAND編集部
グラフィックデザイナー|休日はエッセイや短歌をまとめたZINEを制作しています。猫が好き。 -
sokoniaru (SHIDEN)
sokoniaru
映像クリエイター
映像が好き!これまで札幌のアーティストのMV制作やライブ映像なども手がける。 -
Riku Goda /
合田 りくriku____g0806
写真・映像クリエイター
北海道で暮らす人々と文化、その日常を写真と映像で記録する。ウェディングやライブなど撮影するジャンルは多彩。 -
Hiroto Miyazaki
hirotomiyazaki.jp
Cinematographer
拠点をニセコに置きながら東京にも活動の幅を広げ活動中。リアルで儚い空気を映像に残す。好物は羊羹。 -
村木渓太
keitamuraki.jp
映像作家 | 写真家
2023年に拠点を東京から札幌に移し、街と人の営みをドキュメントする。プロダクトPRムービーやイベント映像も撮影。 -
對馬友理
yuri_24ma
ヘアメイク | 制作・企画コーディネートetc
広告のヘアメイクの他、制作・企画コーディネートやキャスティングなど多方面で活動中。