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2026.04.07
夢中になれる、仕事のはなし|Vol.6
料理人 神村さん
How long have we been living in this town? We’ve found more favorite spots, and more friends we see all the time. But sometimes, having too many “usuals” can make our world feel smaller. Let’s try a place we’ve never been. Let’s talk to someone we’ve never met. Not somewhere far away just one step beyond the streets we know. About 150 years ago, people came here and started a treasure hunt. Let’s begin the next chapter together.
円山の一角にある「抽斗(ひきだし)」という飲食店で、ひとりの料理人が厨房に立っている。
沖縄出身、フリーランスの料理人として活動する神村さんだ。
“フリーランスの料理人”と聞くと、
どこか自由で、軽やかな働き方を想像する。
だけどその裏には、
地道に積み重ねてきた時間があるはず。
一体どんな道を歩んできた人なんだろう。
料理人を志したきっかけは
理想的な「父親像」
料理人という存在を知ったのは、まだ6歳か7歳の頃。休みの日になると、仲の良かった友達の家に遊びに行っていた。
そこには、いつも友達のお父さんがいて一緒に遊んでくれたという。そのお父さんは、米軍基地で働く料理人だった。
「自分の父親はボクが幼いころ働き盛りだったんです。だから友達のお父さんが家にいて一緒に遊んでくれることが純粋に子どもの頃、嬉しかったんですよね。だから、料理人=理想的な父親像のような感覚がありました。もちろん自分の父親とは今でも仲良しですし、尊敬していますけどね。」
そんな憧れに似た感覚は残り続け、小学校の卒業スピーチで神村少年は「将来の夢は料理人」と初めて口にした。
コロナ禍を経て変わった
働き方への意識
リゾートホテルのレストランで働いていた神村さん。
コロナ禍はホテル自体への客足が途絶え、ホテルも休館を余儀なくされた。
料理ができない日々に悶々としていたそう。
コロナが明けるまできっと塞ぎ込む日が続いたのでは?と思いながら話を聞いていたが、驚きの答えが返ってきた。
「やることがなかったので、逆に色んな料理の勉強に時間を使いました。魚屋さんに行って魚のさばき方を教えてもらったりもしていましたね。」
自分で日々を開拓していく時期を経験したからこそ、
会社に守られる働き方だけではない道を意識するようになったという。
コロナ後、独立を見据えたうえで
自分が目指したい料理を勉強するために北海道にやってきた神村さん。
ミシェル・ブラストーヤジャポンやフラノ寶亭留で
自分の料理を模索しながら、札幌市西区のAGRISCAPEというお店と出会った。
料理人としての「究極」に触れた場所
畑で育てた野菜が、皿の上にのる。そのすぐそばで鶏を飼い、豚がいて、羊や山羊もいる。
食材が届くのを待つのではなく、育っていく過程そのものが、すぐ隣にある。
そんな場所が「AGRISCAPE」だった。
この場所で2年ほど働いた神村さん。
食材を自分たちの手で育て、調理し、料理人自らがお客さんのもとへ料理を運び、自分の言葉で説明する。
「これが料理人としての究極の形だと思いました」
AGRISCAPEで過ごした時間は、神村さんの中にあった“理想の輪郭”を、少しずつはっきりさせていった。
そんな矢先、知人から「自由に動ける料理人を探している」という話が舞い込む。当時はまだ、フリーランスという働き方を具体的に思い描いていたわけではなかった。
それでも、
「自分なりの理想に、もう一歩近づけるかもしれない。」
そう感じた神村さんは、新たな働き方へと踏み出すことを決めた。
家庭と仕事のバランスを求めて
フリーランスという働き方を選んだ理由は、もうひとつある。それは、家庭との向き合い方だった。
料理人になってから、「忙しくて家に帰れない」「帰っても、子どもはもう寝ている」など、家庭と仕事のバランスに悩むシェフを多く見てきたそう。
好きな料理を極める一方で、家庭との距離が生まれてしまう現実。それを、自分の家族には重ねたくなかった。
現在神村さんは「抽斗」のシェフとして、平日の14時からのみお店に立つ。朝は子どもを保育園に送り、家族のことを終えてから仕事に向かう。
まだ、完璧なバランスとは言えない。家族間でも、試行錯誤は続いているそうだ。それでも、少しずつ前に進んでいる感覚はあるという。
周りもみんなそうだから。この業界は仕方ない。そんな風にあきらめることは一切せずに、自分が嫌な自分にならないために行動を重ねている姿は、一皿へ一切の妥協を許さない料理人としての在り方にも重なって見えた。
夢中になれる、しごとの理由
ホテルで働いていた頃、休みの日には別の店で研修を受けていたそう。パン屋に通いパン作りを教わり、本場のイタリア人がいるイタリアンで料理を教わったり。ときには、休みの日にもかかわらず、自らホテルの別部門に足を運び、菓子づくりを学ぶこともあったという。
体力的にはきつかったが、不思議とやめようとは思わなかった。そこにあったのは、「もっと知りたい」という気持ち。もちろん、自分の未熟さに戸惑うこともあった。「こんなこともできないのか」と思われるのでは、とネガティブに考えることもしばしば。
それでも、ひとりで考えているだけでは、自分の枠からは出られない。だからこそ、あえて外に出る。他の料理人の感性に触れ、自分の引き出しを増やしていく。その繰り返しが、神村さんの行動力をつくってきた。
今でも、休みの日に会いに行きたい料理人が、頭の中に何人も浮かぶという。
「一度、目指してしまった料理人っていう仕事を楽しみたい。
料理以外のことをしている自分は想像できないし、想像しようとも思わないです。」
目の前の“知りたい”に素直でいること。その気持ちに従って、体を動かし続けること。その積み重ねが、いつの間にか“夢中”という状態をつくっていく。
このマチにも、そんなふうに自分の道を切り拓いている人がいる。
神村さんがこれからどんな料理をつくり、どんな人生を歩んでいくのか。
今後も目が離せない料理人であり、そして、素敵なお父さんだ。
Profile
Photo by Miku Katsuno
Text by Hikari Kubota
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ABOUT US
LANDについて
いつものマチの、
一歩先。
この街にどれほど暮らしているだろう。
お気に入りのお店も増えて
よく会う仲間も増えてきた。
だけど、「いつもの」が増えるって
自分を狭める。
知らない店に行こう、
話したことのない人に会いに行こう。
はるか遠くの場所ではなくて、
いつものマチの一歩先。
およそ150年前に
この地を拓いた人々から始まった宝探し。
その続きを一緒に始めよう。
CREATORS
撮影・制作 協力クリエイター
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赤坂若菜
wa___ka.pp
LAND編集長
PATTERN PLANNING(株)CEO|ブランディングディレクター|旅、ラーメン、焼肉、お酒、器ラバー。 -
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noriok
LAND編集部
株式会社NEW CEO|クリエイティブディレクター|色々な土地を歩き、体を動かし、モノに触れながら、ユーモアを考える。 -
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LAND編集部
ディレクター兼コピーライター|LANDの企画・制作・原稿制作を担当。取材を通してこのマチの人と出会うことが大好き。 -
勝野美玖
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LAND編集部
ディレクター|食べることと愛犬が原動力。LANDでは撮影も担当。 -
荒巻美千子
hina_ta_bo_kko
LAND編集部
ディレクター兼コピーライター|LANDでは写真撮影も担当。愛機は「Sigma fp」 -
藤崎由理
yurif333
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堀口暁音
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映像が好き!これまで札幌のアーティストのMV制作やライブ映像なども手がける。 -
Riku Goda /
合田 りくriku____g0806
写真・映像クリエイター
北海道で暮らす人々と文化、その日常を写真と映像で記録する。ウェディングやライブなど撮影するジャンルは多彩。 -
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拠点をニセコに置きながら東京にも活動の幅を広げ活動中。リアルで儚い空気を映像に残す。好物は羊羹。 -
村木渓太
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映像作家 | 写真家
2023年に拠点を東京から札幌に移し、街と人の営みをドキュメントする。プロダクトPRムービーやイベント映像も撮影。 -
對馬友理
yuri_24ma
ヘアメイク | 制作・企画コーディネートetc
広告のヘアメイクの他、制作・企画コーディネートやキャスティングなど多方面で活動中。